派遣先が派遣社員を受け入れる場合、多くの人が想像する人物像は、一言でスキルが高い人というのが全会一致になるのではないかと想像します。
ここで、筆者がまだ現役で派遣先の業務をしていた時の事例を1つ紹介します。
ある日、派遣先(有名建設機械製造系企業)の役員さんから、
「雇用太郎(筆者)さん、人を増やしたいのだけど、誰か良い人居ないかねぇ~??」
と声をかけられました。
当時たまたまですが、筆者の派遣会社に待機している同業(建設機械系開発部門)経験者が居ましたので、その方を先方役員さんに向けて自信を持って打診をしてみました。
しかし、返事は即答の「ノー」でした。
腑に落ちない筆者は、役員さんに採用の候補にならない理由を聞いてみましたところ、
「雇用太郎さん、わからないかい?」
「同業のバリバリの人が来られたら上手く行くと思うかもしれないけど、逆に、うちの職場の子達が引いたりはしないかね?」と言われたのです。
経験や実績が優秀でも必ずしも戦力としての売りにはならない
筆者が所属していた部署というのが、設計部門全体を統括する部門でしたので、いわゆる商品企画におられるような優秀な社員ばかりのエリート職場でした。
その優秀な社員ばかりいるエリート職場に、同業の優秀なエンジニアを迎え入れても噛み合わなければ何も意味がない、ということです。
更に役員さんのお話を聞きますと、
「出る杭は打たれるではありませんが、跳びぬけた才能ではなく、みんなと仲良くできる才能と、新しいアイデアを持ち出せる人が欲しい」ということでした。
確かに、優秀な人同士が一緒に仕事をすると、プライドのぶつけ合いになることも予想され、下手をすると職場の雰囲気を壊してしまう可能性さえ考えられます。
話の流れで誤解をされる前に、ここで1つ補足です。
筆者がエリートではなく、エリート職場に所属していました!という意味です!(笑)
「お前はそんなに凄い奴なんかい?」と突っ込まれるのが怖かったので・・・(笑)
気を取り直して話を元に戻しますが、
先方役員さんには、「敢えて同業ではない、専門の知識がない人、開発や設計の経験がない人でも構わない」という要望であったことを思い出しました。
設計開発という職場は、頭でっかちでは新しいアイデアを生み出せません。
常に世の先端を進もうとするためには、固定概念を覆す力も必要です。
そういう意味で、業界未経験者を要望されたのだと思います。
経験豊富な人材よりも意外な発想力を求められる
単に人手不足という問題のみならば、それなりの人材投入で事足りると考えます。
しかし、派遣先の部署によっては、常に革新的に物事を捉えていきたいというムードもあるため、同じことをやっていては職場の改革、仕事の進め方の改善にはなりません。
更には、商品開発の発想が古いままでは厳しい市場競争にも敗れてしまいかねないのです。
よって、派遣先がどのような人材を求めているか、については、ニーズのヒアリングが重要になってきます。
いくら技術経験や知識は不要と言われても、ただ席に座ってぼう~っとしている人では戦力にはなりませんから・・・
技術経験はないけど、探求心が人一倍優れているなど、アピールポイントは必要ですね。
優秀な人材とは頭でっかちとは違う
派遣会社が人材を集める時に、あなたは何が出来ますか?的な質問をよくします。
どんな資格を取得しているとか、どんな開発支援システムを使うことが出来るとか、秀でる才能ではありませんが、派遣会社営業が派遣先に優秀な人材が居る事をアピールしたいがために集めたい材料なのだと思います。
筆者も当初は優秀なエンジニアとはそのようなものだと思っていました。
が、しかし、特に資格もない、経験もない、何もないことも、実は思考が新鮮で武器になるということをあらためて知ったのです。
その職場の持つ特異性質、つまり仕事のやり方や進め方は実践しながら覚えればよい。
それよりも、常に新鮮な目で物事を見、提案できる事が大きな武器になるということ。
全ての派遣先のニーズがこのような感じではないことは百も承知です。
しかし、固定概念を外して常にフレッシュな思いで取り組めるか?と言われると、なるほどな、と思い返すことがよくあります。
まとめ
エンジニアとして多彩な才能を持つというのは多くの人が望む姿だと思います。人に誇れる仕事をするには沢山の経験をし、苦難を乗り越えた者だけが味わうものだと思っていましたが、ある時の経験から未経験の人にも才能を開花できるチャンスがあるのでは?と思うようになりました。
もちろん、そのようなチャンスを頂けるタイミングも必要かもしれませんが、自分自身がどのようなエンジニアになりたいか?という思いを持つことも1つの売りになるのだと考えます。まずは、やりたい、やってみたい、という強い思いが大切ですね。